サイトマップ |
トップページ>過去の教育研修会>第1回教育研修会 |
|
■ 第1回産業衛生技術部会・教育研修会、第3回 関東産業衛生技術部会・研修会 報告
|
2003年5月23日,午後6時から参加者25名で慶應大学医学部講堂にて,「第1回 産衛・産業衛生技術部会・教育研修会」および「第3回
関東産業衛生技術部会・研修会」が開かれた。講演者の大前慶應大教授は,産衛・「許容濃度等に関する委員会」の委員長であり,勧告している許容濃度の決まり方の内幕も含めて,かなりざっくばらんに話していただいた。 最近の委員会で示されたトピックとしては,ヒトと実験動物で代謝が異なることから,実験動物で発がん性を示す化学物質がヒトでは発がん性を示さない例がいくつか示されたことである。たとえば,アクリロニトリル,HCFC-123など。また,ジクロロメタンでも議論が続いている。許容濃度の暫定値について科学的な意見が出されると委員会で議論することになる。 量-影響関係では, (1)不可逆性影響・可逆性影響,(2)顕性影響・非顕性影響,および(3)健康に不利な影響・健康に不利にならない影響,の3つの影響区分の仕方がありうるが,許容濃度は(3)を区分するレベルを「臨界影響」として使っている。 集団で見る量-反応関係では,重篤な死亡から自覚症状までの量反応関係があるが,許容濃度は自覚症状で考えている。なお,量-反応関係では集団の特徴により大きく影響を受けるため,一般人口の量-反応関係での閾値と健康診断が整った大企業の従業員の集団では1000倍ぐらいの違いがあり得る。感作性物質(アレルギー性物質)の場合では,されるレベルで許容濃度を考えざるをえないと考えられている。 発がん性物質についての許容濃度委員会の取組は,1997年のベンゼン以降変わった。ベンゼンについては「過剰発がん生涯リスクレベル」として,10-3および10-4に対応する評価値を示している。あくまでリスクアセスメント結果を示している。リスクマネジメントまでは踏み込まない。ただ,産衛の過剰発がん生涯リスクレベルと対応する評価値を,そのまま職場の環境管理のための「管理濃度」にする話が出ているが,第1管理区分になるためには(サンプル濃度のばらつきを考慮する計算方法の影響から)測定濃度が1/3程度でないと第1管理区分にならないことから,議論がある。 その他,公演後の質疑でもいくつか有意義なやりとりがあった。食事等の影響がでる化学物質,ダイオキシンであるとかカドミウムとかの取り扱いについては議論がある。経皮吸収については,経皮吸収によって影響が出てくるかもしれないことから評価しているが,モニタリングが可能な物質についてはその面で評価してもいいのではないかとの考え方も出されている。 最後に,許容濃度を使っていこうとする産業衛生技術の専門家に対する要望は何かの問に対し,曝露濃度測定と健康影響調査の両方を実施してほしい。多くの疫学研究では曝露濃度のデータがない。長期の継続的な曝露濃度の測定結果が大切であり,ぜひともその点で貢献してほしいとのことであった。また,法定外の化学物質の生物学的モニタリングにも力を入れてほしいとのことであった。 日頃,許容濃度を使って曝露評価さらにはリスクマネジメントまでやろうと訴えている者として,大前教授のお話は自分の勉強不足を痛感させるものとなった。今後の専門産業衛生技術者用のテキストの内容として欠かせないと確信させられる講演となった。(文責:原邦夫) |
|
■ 開催案内文 各位 第1回 産業衛生技術部会・教育研修会 職場のリスクマネジメントを担う専門産業衛生技術者が必要とする知識・技能を習得できる研修会を開催します。今後,約2年間,年4回の研修会等を通じて,「専門産業衛生技術者・認定研修制度」の確立をめざして試行していきます。 演題:許容濃度とユニットリスク 参加のための事前申し込みは必要ありません。また技術部会員以外の参加も可能です。 |
▲このページのトップへ |
|
|
Copyright (C) 2004 Occupational Hygiene & Ergonomics All Rights Reserved. |