■ 第4回産業衛生技術部会教育研修会(第5回 関東産業衛生技術部会研修会)
日時 |
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2004年2月6日(金)18:00〜20:00 |
場所 |
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順天堂大学(JR・お茶の水駅)・8号館7階第4カンファレンスルーム |
テーマ |
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企業の社会的責任と安全衛生 |
演者 |
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坂清次(三菱総研・客員研究員,労働科学研究所・協力研究員) |
2月6日,順天堂大学で,第4回 産衛・産業衛生技術部会・教育研修会および第5回 関東産業衛生技術部会・研修会を開催した。講師は,企業の社会的責任(SR)・技術者倫理の問題に早くから取り組んでいる坂清次氏(さかきよつぐ:三菱総研・客員研究員,労働科学研究所・協力研究員)であった。参加者は十数人とこじんまりとしたものであったが,変動する企業社会の中で社会的役割を果たすべき産業衛生学会員への刺激的な中身で,議論も有意義となった。以下,講演の印象に残った点について触れる。
まず,40年間の三菱化学時代のプラント製造・運転の経験から,生産性の高いプラントほど安全衛生もしっかりしている例について,サウジアラビアのプラントでの経験を紹介された。サウジアラビアで石油プラントを立ち上げ,現地技術者の教育をしてきたが,今そのプラントは日本のプラントより生産性もそして安全衛生の面でも優れている。もう何年も大きな災害は起きてない。
次に,最近の日本の企業を取り巻く社会状況。最近は“One-strike-out”の状況になっている。東海のJCOの事故,雪印の事件,などでは会社が1発で潰れている。中国でのトヨタの「事件」もあわやということであった。
とはいえ,企業は一連の不祥事を受けて「企業倫理」の確立の方向を打ち出している。企業を取り巻く状況も変化している。消費者行動の変化,投資家からの要求の変化(たとえばSRI),あるいは内部告発の法制化の動き。これらは産衛学会にとってチャンスである。が,じつは置いてきぼりにされはじめているのかもしれない。企業は,既に大学や学会の技術者倫理に先んじている。なんとか工学系の学会,例えば日本機械学会倫理規定では,「人類の安全,健康,福祉の向上・増進の保全のために,その専門的能力・技芸を最大限に発揮することを希求する」としている。具体的に倫理とは,安全,健康,環境に着目することであることが唱われはじめている。産衛学会はいかがであろうか。社会的責任を問われた企業は,産衛学会が対応を損ねると,外国の学会にこの時流の社会的責任・技術者倫理の問題の相談を持ちかけるようになるかもしれない。
ちょっと考えさせられ,とくに技術部会員への問題提起の講演であった。(文責:原邦夫) |