■ 第2回 産業衛生技術部会教育研修会(第4回 関東産業衛生技術部会研修会)
日時 |
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2003年7月31日(木)18:00〜20:00 |
場所 |
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順天堂大学(JR・お茶の水駅)・5号館3階会議室 |
テーマ |
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人間工学専門資格制度第一期認定をめぐって |
演者 |
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酒井一博(日本人間工学会理事) |
第2回産業衛生技術部会・教育研修会が,関東産業衛生技術部会の第4回研修会としても位置づけられて,酒井一博先生(日本人間工学会理事)を迎えて行われた。7月31日,順天堂大学での開催で,参加者は約20名であった。
昨年度末,人間工学の専門家資格制度が発足した。その発足の初期から関わっている立場から,酒井一博先生に新しい認定資格制度を発足させるに当たっての様々な経験等を紹介していただいた。以下,講演および講演後のやりとりの趣旨を報告する。
日本人間工学会に,最初の人間工学専門家資格認定委員会が発足したのが1994年で,10年近く,4期の委員会を経て,認定制度が制定されることとなった。国際的な学会としては国際人間工学会(IEA)がある。IEAには,米国,欧州,アジアなど36カ国が加盟している。各国1機関が所属し,日本は日本人間工学会が所属している。世界的な人間工学の資格制度についてはIEAが束ねる形になっているが,各国ごとにそれぞれ人間工学会とは別の資格認定機関を設立し,各国ごとに認定制度が進められている。一部,1対1の各国機関の制度の相互認証が始まっているが,IEAを介した標準的な国際認証制度が導入され始めた。
ただし,日本人間工学会の今回の人間工学専門家資格認定は,国際認証をめざしているが,まだ受けられていない。これは,人間工学に関する教育プログラムと資格認定プログラムを別の機関で実施するという国際的ルールに,まだ合致していないことが主な理由である。このほか,初年度から学会とは別の運営機関を設けることは運営上のリスクが高いと判断していることや,資格のようなサービスは学会員を対象とすべきであるとの指導が監督官庁からあるために,結果的に学会自身による認定作業を進めることとなった。半面,国際認証の手続きは,現状のままではとれない。
第1期認定試験の受験者は145名であった(約2,000人の会員中)。この認定制度に関して,いくつか課題が残っている。たとえば,資格が産業界の活性化のためにどこまで使えるのか。現状では全く不十分である。産業界との連携によって資格制度を応用したビジネスモデルを多様に立ち上げサクセス・ストーリーをたくさん作ることが課題である。そのためにも,人間工学手法の開発によって多くの人を引きつける必要がある。
人間工学には,製品開発,産業現場領域,生活場面という3つの主要応用領域がある。多くの人の魅力を引きつけるためには,産業現場で使える手法の開発が必要と考え,産業疲労研究会(産衛)では,人間工学リスクアセスメントの3点セット(自覚症しらべ,身体疲労部位,作業条件チェックリスト)を選定し,活用法を提案した。同様の視点をISOの場に持ち込み,ISO/TC159/SC3のワーキンググループ(井谷徹名市大教授が議長)において検討・発信し,現在,コミッティードラフトの段階にまでつめている。
色々と,産業衛生技術部会の認定制度を考えるに当たっても,大いに示唆に富む内容であった(文責:原邦夫)。 |